大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪高等裁判所 昭和44年(ラ)258号 決定

理由

抗告人は、「原決定を取消し、更に相当の裁判を求める。」と申立て、その抗告理由は、「競売申立債権者は抗告人から昭和四一年三月頃より利息制限法超過の利息を受取る等しており、現在その詳細を調査中であるが債務はすでに消滅している。抗告人は神戸簡易裁判所に債務履行猶予調停申立をしたところ、本件不動産に対する競売手続の停止決定を得た。」というにある。

本件記録によると、抗告人は本件競売申立債権者の株式会社寿商事を相手方として神戸簡易裁判所に対し本件被担保債権についての債務履行猶予の民事一般調停の申立(同裁判所昭和四四年(ノ)第一四四号)をし、原決定言渡後の昭和四四年八月六日同裁判所より「本件競売手続は、右調停事件の終了に至るまでこれを停止する。」との決定を得て、同月七日当裁判所に右停止決定正本を提出したことが認められる。ところで民訴法六八二条、六七四条、六七二条は競売法三二条二項により任意競売に準用されるが、民訴法六八二条二項が同法六七四条二項、六七二条一号後段の各規定を抗告審に準用するゆえんを考えてみるに、競落許可決定が一旦適法に言渡された後、その確定前に、競売手続停止決定の正本が執行裁判所又は抗告審に提出された場合には、執行裁判所をして該停止決定が効力を失うまで爾後の競売手続の続行を許さないものとするとともに、他方で、もし該停止決定の発せられた基本の手続の終結(例えば執行異議、訴訟の判決の言渡、調停手続の終結など)に至るまで競落許可決定を維持することになると、競売手続上の多数の利害関係人が相当期間にわたつて浮動的、不安定な状態にさらされることになる。このような事態は、機械的に迅速な事務処理の進行を期する競売手続の本旨にそぐわない。そこで、この場合、競落許可決定を取消して競落を許さない状態に引戻し、該停止決定の発せられた基本の手続の結果いかんによつて、あらためて競売を実施させようとするものにほかならない。競売手続停止決定による競売手続の停止が競落不許事由として裁判所の職権調査事項とされているのも、そのためである。

右の次第で、抗告人の、その余の抗告理由について判断するまでもなく、本件抗告は理由がある。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例